イメージと現実の違い 

先日、久しぶりに藤子不二雄の漫画「まんが道」を読み返したのだけれど。

貧しい漫画家の卵たちがボロボロのアパートに住んでて純粋に漫画を描いていた青春の場所・トキワ荘
というイメージはこの漫画から作られたんだなとあらためて思った。

いや「まんが道」は漫画として、物語としては最高に面白くて高校時代に買った全集をいまだに読み返すわけですからね。

ただ
この「まんが道」が事実かと言うと全然違う訳でね。
漫画の創作部分を事実と勘違いしている人が多すぎる。

トキワ荘は1952年の新築アパートでして
1953年に手塚治虫が仕事場として入居
1954年に藤子不二雄の2人が手塚治虫の部屋をそのまま借りて入居。
1956年に石森章太郎と赤塚不二夫が入居。

つまり彼らは家賃の高い新築のアパートを借りてワイワイ漫画を描いていたわけです。

「まんが道」で漫画家たちが「金欠」だからラーメンばっかり、というシーンがよく出てくるのですが
彼らの当時の月収はサラリーマンの5倍以上

お金があるから彼らは高価なカメラを買ったり、入場料がまだ高かった映画館に行きまくり、本を買い、贅沢な生活で散財していたから生活費にしわ寄せがいってただけなんですよ(笑)
まんが道のイメージとは程遠いものがあったみたいですね。

藤子不二雄という人はこの「イメージづくり」の才能が天才的だったと思いますね。

ある程度、漫画文化が浸透してきた時
世の中が漫画の第一人者だと頭に浮かんでいたのは石森章太郎だったんですよ。

そりゃそうですよね
仮面ライダー、スーパー戦隊、女の子のアニメなど、ほとんどが石森章太郎の漫画原作、さらに弟子の永井豪はマジンガーZ、デビルマンなどで大ヒット。いまだに人気があります。
で、世間は石森章太郎を「漫画の王様」と呼びました。

ここで面白く無いのが藤子不二雄ですね。
彼らは手塚治虫崇拝者ですからね、王様を超えるものは、、、

「手塚治虫は漫画の神様」とあらゆるメディアで話し始めるんですよキャンペーンみたいに。
で、それにNHKが乗っかって既に落ち目だった手塚治虫を祭り上げてNHKスペシャルですよ。

今は石森章太郎を漫画の王様と呼ぶ人もいなくなり、手塚治虫が漫画の神様として、子供たちが親の遺産で楽しく暮らしていますね。

当時の漫画家たちはあまり口にはしないけれど
「決していい人ではなかった」
すごい新人が出てきたら潰しにかかる、嫌味たらたら言いまくり、などなど。

また、手塚治虫は共産主義者であることもメディア受けが良く、同じく共産主義者のやなせたかしと共に重宝されたんですよね。

我々の日常生活の中でも作られたイメージというものが定着しているものが割と多くて、調べたら全然違うし、ということが多々あるのよね。